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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)34号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人小野塵一の後記上告趣意に對する判斷は次の通りである。

記録の示す通り、被告人は昭和四年四月より同十四年一月までの間に賭博罪で六回、同十五年二月より同十九年二月までの間に賭博開帳常習賭博罪又は常習賭博罪で四回處罰されたものであって、賭博の習癖は相當根強いものであることを窺い知ることができる。原審において、かかる前科にてらし、本件賭博を常習賭博と認定したことは正當であって、論旨の如き違法は認められない。所論の如く本件賭博行爲は、被告人の犯した本件賭博罪直前の賭博罪により處罰された日より略三年三ヶ月を經過した後に行われたものであることは記録上明らかであるが、三年以上同じ賭博行爲をしなければ賭博の習癖は消滅したものと認めなければならないという実驗則は存在しないから、本件賭博を常習賭博と認定したからとて実驗則に違背して事実を認定したものということはできない。論旨は結局原審の事実認定を非難するものであって、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律第十三條第二項により採用し難いものである。

よって刑事訴訟法第四百四十六條により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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